PROJECT STORY 02
太陽グループ創業100周年EXPO
プロの期待を超えてゆく。
チームSHOEIで実現した、
100周年の“体験”づくり。
プロジェクトの概要
戦後、テントや帆、幌(ほろ)に使われる頑丈な布の加工から始まり、膜構造建築やイベント企画、施設運営へと大きく事業を広げた太陽グループ。その100周年を記念し、顧客、そして社員とその家族への感謝を伝えるイベント「ONE TAIYO EXPO」が開催されました。企画・構想から参画し、デザイン、装飾まで任された昭栄美術は、イベントのプロたるTSP太陽を含む太陽グループの期待を超えるべく大奮闘。結果、本番は大盛況にて幕を閉じ、その後の関係にも好影響を残しました。来場者に企業の100年を振り返る“体験”を起こさせる仕掛けは、どんなこだわりや工夫から生まれたのか。チームはどう互いにうまく頼りあったのか。タッグを組んで臨んだ、営業、プランナー、デザイナーの3者に聞きます。
Profile
田中 優太(たなか ゆうた)
営業職 第1営業部営業2課 / 新卒入社9年目
高橋 祐也(たかはし ゆうや)
クリエイティブ職 プランニング課 / 新卒入社8年目
水野 智仁(みずの ともひと)
クリエイティブ職スペースデザイン課 / 中途入社19年目
プロがプロに託した、
100周年のイベントづくり。
「太陽グループ様は、太陽工業株式会社様、TSP太陽株式会社様、アクティオ株式会社様の3社から成る企業グループです。昭栄美術はイベントプロデュース業のTSP太陽様と長年お付き合いがあり、先方が手がけられる各種イベントの会場装飾をよくご一緒させていただいておりました。そういう時は、TSP太陽様がプロデューサー、昭栄美術は実行部隊。先方が立てられた構想を、会場で形にしていくという役割分担が常でした。ところが今回、太陽グループ様の100周年という大切な節目のイベントに際しては、『何をするか』を考える構想の段階から太陽グループ様と二人三脚で手掛けさせていただいたんです。おそらく普段から『こんなことをしたらどうですか、あんなことをしたらどうですか』と提案していたことや、先方のご要望に一生懸命に応えてきたことを評価していただけたのではないかと思います」
「製作力だけでなく、昭栄美術の企画力やプランニングに期待してもらえたのは光栄ですよね」
「本当です、彼ら自身がイベントづくりのプロですからね。とはいえ私一人で対応できる話ではありません。お話をいただいてすぐ、高橋さんと水野さんのお力を借りようと思いました」
「先方からは、最初に大体どんなことをしたいかという外郭のご要望はいただいていました。料理に喩えていうなら、『カレーを作りたい』というリクエストと、そのための材料は先方からもらっている。でもどんな調理方法で、どんな味のカレーにするかは私たちが決めていい。そんなスタートだったと思います」
4つの歯車をフルに動かし、
満足度を上げていく。
「太陽グループ様の原点は、戦後の焼け野原の中、ミシン一台とハサミ一丁でリュックサックや船舶用シートを作り始めたことにあります。やがて映画館の幕やサーカスのテントを手がけるようになり、そこから徐々にイベントの室内装飾やプロデュースへと事業を広げられました。100周年のイベントでは、その歴史をタイムスリップして振り返るような体験をさせたいとのご要望がありました。タイムスリップと言っても、ドラえもん的にいくか、Back to the Future的にいくか。色々なアイデアがある中で、『トンネルでいこう!』に決まってからは、先方が自らトンネルの演出・設計を、私はより細かく『そのトンネルを潜る体験とはどんなものになるか?』の構想に着手しました」
「高橋さんは、イベントでの体験の筋道を立てるのが本当にうまい。言葉できちっとデザインしてくれるんです。例えば今回はタイムスリップして昭和に行くわけですが、一言で昭和と言っても世代が違えば想像する昭和は違います。高橋さんはそうした部分も、『こんな昭和』と言葉で事細かに示してくれる。私は高橋さんがいないとデザインに着手できません(笑)」
「ありがとうございます。言うなれば私は“来場者にどういう体験をさせたいか担当”、水野さんは“それをどうデザインで表現するか担当”、田中さんは“お客様に要望をヒアリングし、予算をつけていく担当”ですね」
「営業に関しては、今回はお客様自身が数多くのイベントを仕掛けてきた立場なだけに、細部に至るまで踏み込んだご意見が出てくることは予想していました。一方で水野さんと高橋さんにもやりたいことがある。私の仕事は両者を取りまとめながら、お客様に対して『どういう意図で・どれだけ本気でこれをやりたいか』を説明すること。時には社内に対しても説得をしながら、取り付けた予算内で最大のクオリティを目指してディレクションしました」
「決して仲良しこよしのチームではないんですよね。お互いに腹を割って言いたいことを言うから、いいものができるんだと思います。そして忘れてはならないのは、“それを実際にどう作ろうか担当”である製作部の存在です。営業、プランナー、デザイナー、製作。この4カテゴリーないとイベントは成立せず、お客様の満足も得られません」
「製作部には本当に助けてもらいました。『依頼されたものを作る』って、単純に見えて、決して簡単ではありませんから、とても大変だったと思います」
「製作部の大変さは、仕事のバトンを受け取るのが最後だからでもありますよね。図面はできてしまっていて、でもそれをそのまま作ったら予算にははまらず、工程にも不具合が生じる。その難しさを乗り越え、クオリティの高い“決着”をつけることにやりがいに感じているのがうちの製作部です。今回も『どの素材を使えばこの古民家の表現に近づけられるか』などといった会話が飛び交っていました。頭が下がりますし、そこに真のクリエイティビティがあると言っても良いのではないかと思っています」
細部までこだわり抜いた、
リアルな“昭和”タイムスリップ。
▲ミゼットの幌(ほろ)や、大阪万博のパビリオンの膜構造などを当時手がけたのが太陽工業様
「ご来場者様の体験は、一台のミシンから始まります。ミシンの向こうのトンネルを潜ると、目の前には昭和のレトロ空間が広がる。その等身大の昭和のジオラマの中を歩いていくと、時代を象徴するダイハツのミゼットがあり、駄菓子屋があり、その駄菓子屋の中ではピンボール遊びなどが実際にできるようになっています。このあたりは70年の大阪万博の頃の日本を表現しています。この空間に「何を置くか」を考えるのは太陽グループ様が担われている部分が多く、私はそれを受けてきちんと時代考証を行い、その内容をジオラマに細かく反映して当日の現場まで収める役割でした」
「昭和空間のデザインを一度で気に入っていただけた時は、ホッとして胸を撫で下ろしました。というのもここが通らないとゼロからアイデアの練り直しになりますし、後々の工程が遅れて時間との勝負にもなってくる」
「わかります。プランナーも、最初にアイデアを通せるかどうかが最大の勝負です。なんなら最初に提案を通したら、あとは他の人に任せてチームから抜けるプランナーも多いくらいですからね。ただ、私のモットーは構想だけじゃ終わらないこと。今回も最後のデコレーションまで担当させてもらっています。70年代の経済背景や生活様式を調べ、どんな備品を、いくらで、どう調達してくればいいかを考えたり、仕上げにエイジング加工を施したり。一手間かけながらリアルな空間を作り込んで、お客様の満足度を上げていきました。こういう“現実に落とし込む”部分は、私が以前営業にいたことが経験として活きています。予算感覚や、商材レベルで実現イメージを描く力が役に立ちました」
「過去からだんだん現在へと移り変わり、最後は、太陽グループ様が今後どんなことに挑戦していくのか、その方向性を発表するステージがありました。2294人のご来場者様の反応は上々で、太陽グループの皆様からも口々に感謝の言葉をいただきました。印象深かったのが、お客様から『記念にこのイベントの竣工図を会社として保存したい』と言われたこと。そんなことを言っていただけたのは初めてです。表紙をつけ、目次もつけてお渡ししました」
クオリティとは、
「ありがとう」のことなんだ。
「私は常々、クオリティとは『ありがとう』のことだとデザインのメンバーに話しています。というのもデザインのクオリティって非常に計りづらくて、デザインそのものにもクオリティはあるし、図面のクオリティもあるし、打ち合わせにおける個人の立ち位置にもクオリティはある。結局のところ、誰かに『ありがとう』と言われる動きができたかどうか。それに尽きるのではないかと思うんです。今回は本当に感謝していただけたので、クオリティの高い仕事ができたと言えるんじゃないかな、と思います」
「同感です。私も相手が喜んでくれて『ありがとう』と言ってくれることに最もやりがいを感じますし、そのために自分にできることを常に考えながら仕事をしています。とりわけ太陽グループ様は私が入社して以来9年にわたってお世話になってきたお客様。私自身からの9年分の感謝を込めて臨んだところがあります。素晴らしい形で終わることができ、感無量です。常に私たちと対等に接してくださり、“一緒にいいものを作ろう”という姿勢を貫いてくださった太陽グループの皆様には本当に感謝していますし、水野さんにも高橋さんにも、心から感謝です」
「こちらこそです。これに甘んじず、これからも感謝される仕事をするために、自分に足りない知識や技術をいつも補っていかなければと感じます。以前営業にいた経験が今回活かされたように、幅広い経験を肥やしにして、自分を磨くことで総合的にお客様の満足に繋げられたらと」
「今回のイベントのあと、TSP太陽様の中でこれまでお取引のなかった部署からも新たにご依頼をいただくようになりました。またステージの演出を手掛けられた方と横のつながりができたりと、さまざまな展開が生まれています。101周年以降も、私たち自身が成長することで、お客様の進化に伴走し続けたいですね」